東海大学 医学教育学 › 医学教育FD基礎講座
← 動画一覧へ
発展1(発展編 第1回)・ 教育改善サイクル・SoTL

変えたあとを測る — 教育改善のサイクルとSoTL入門

このモジュールを終えると、次のことができるようになります

ナレーションは合成音声。監修待ち(開発版)。

この回の解説記事
📖 変えたあとを測る — 教育改善のサイクルとSoTL入門

深掘りの読み物 ・ 約10分

台本を読む(制作用ドラフト・監修待ち)

コールドオープン

[映像] 教員室。評価5の整合マトリクスのワークシートが机に置かれ、改善案の欄にペンで書き込みがある。書き終えた手が止まる。

[テロップ] で、良くなったと、どう言えるんだろう?

講師: 発展編へようこそ。ここから先は修了試験に出ません。でも、評価5を終えたあなたに、どうしてもお見せしたい景色があります。ワークシートに改善案を書いたとき、こんな疑問が浮かびませんでしたか。「この改善、やってみて本当に良くなったと、どう言えるんだろう」。今日はこの問いに答えます。

改善サイクル — 診療と同じ

[映像] 「変える→測る→読む→次を変える」の循環図。血圧測定のカットと重なる。

講師: 臨床に置き換えれば、答えは簡単です。降圧薬を処方したら、次の外来で血圧を測り直しますよね。処方しっぱなしの医師はいません。介入したら、測る。教育も同じです。変える、測る、読む、次を変える。このサイクルが回って、初めて改善と呼べます。ところが教育では、「変えて、手応えを感じて、終わり」が実に多いのです。

講師: とはいえ、大がかりに構える必要はありません。合言葉は「1科目・1改善・1測定」です。1つの科目で、1つだけ変えて、1つの指標で測る。欲張って3つも4つも同時に変えると、どれが効いたのか読めなくなりますし、測定項目を増やしすぎると1年目で息切れします。評価5で書いた改善案は1つのはずです。それに測定を1つ、添えてください。小さく変えて、確実に測る。続けられる人は、みなこの形です。

何を測るか — カークパトリックの4段階

[映像] 4段のピラミッド図。下から「反応・学習・行動・成果」。各段に指標の例が浮かぶ。

[テロップ] カークパトリック・モデル — 反応・学習・行動・成果

講師: では、何を測るか。ここで頼りになるのが、研修効果の古典的な枠組み、カークパトリック・モデルの4段階です。反応は授業評価アンケート。学習は試験成績や事前事後の比較。行動は実習でのパフォーマンス評価。成果は国家試験や卒後の長期アウトカムです。上の水準ほど手に入りやすく、下の水準ほど説得力がある。まずは反応と学習から始めるのが正攻法です。

講師: そして、あなたはすでに道具を持っています。評価4で学んだ成績分布の読み方です。平均点だけでなく分布の形を見る、識別指数を確かめる。改善の前後でヒストグラムを並べれば、それだけで立派な測定です。鍵はベースライン、つまり前年度のデータ。昨年の試験成績とアンケートを捨てずに残すことが、来年のあなたへの最高の贈り物になります。教学データの多くはインスティテューショナル・リサーチ、IR部門がすでに持っていますから、自分で集める前に尋ねてみてください。

学生を守る — 測定の倫理

[テロップ] 同意 ・ 成績への非連動 ・ 匿名化 ・ 集計化

講師: ここで一度、立ち止まります。学生は、あなたから成績評価を受ける立場です。教員に頼まれたら断りにくい、脆弱な対象なのです。だから原則は4つ。同意を得ること。協力の有無が成績に一切影響しないこと。匿名化すること。個人ではなく集団として集計すること。例えばアンケートは無記名にし、回収と分析は成績確定後に行う、といった設計です。そして、学会発表や論文として学外に公表するなら、所属機関の倫理審査が原則です。手続きの詳細は学部ごとに異なりますから、必ず所属先のルールに従い、IR部門にも早めに相談してください。

SoTL — 授業改善を業績にする

[映像] 引き出しにしまわれかけたワークシートが、学会のスライドと教育ポートフォリオのファイルに変わっていく。

[テロップ] 教育の学識 Scholarship of Teaching and Learning

講師: 測って、読んで、直した。その記録を、引き出しにしまわないでください。Boyerは1990年、教育もまた研究と同格の学識だと論じました。教育の学識、SoTLです。Glassickの6基準 — 明確な目標、十分な準備、適切な方法、重要な結果、効果的な発表、省察的批評 — に照らすと、評価5からここまで歩いてきたあなたは、大半をすでに満たしています。足りないのは「発表」だけ、ということも多いのです。日本医学教育学会には実践報告の場があり、1科目の前後比較は十分に1演題になります。そして記録は教育ポートフォリオへ。教員の採用や昇任で教育業績が問われる時代は、もう始まっています。

まとめ — この講座も測られる

[映像] K教授が学会場で発表を終え、フロアに一礼する。画面が引いて、この講座のモジュールマップが映る。

[テロップ] 介入したら、測る。測ったら、共有する。

講師: K教授は再設計の顛末を学会で発表し、質疑でこう語りました。「診療と同じですよ。介入したら、測る。測ったら、共有する」。そして最後に種明かしの続きを。この講座自身も、視聴データ、想起チェックの正答率、修了試験の分布をベースラインとして測られ、改訂されていきます。あなたの受講そのものが、この講座の測定の一部です。教える者は、測り続ける者でもある。あなたの科目の1年後の報告を、学会場で聞ける日を楽しみにしています。

理解チェック

選ぶ前に、いちど自分の答えを予想してみましょう(想起練習)。

← 動画一覧 全モジュール修了・仕上げに 修了試験へ

監修状態:監修待ち(開発版)