この講座の設計 — 本講座自体が実例です
本講座は、講座で教える手順——アウトカムを先に定め、それを達成させる方略を選び、そのアウトカムを測る評価を設計する(構成的整合)——に従って設計されています。このページはその設計図の全文公開です。M10を終えたら、この形式をご自身の科目の点検にお使いください。
1. 出発点 — 解決したい問題
科目間で成績評価が大きくばらつくという現象(詳細はM1・M9)。原因を「何を目指すか・どう教えるか・どう測るか」をつなぐ設計の共通言語の不在と捉え、その共通言語の修得をコースの目的に置いた。
2. コースアウトカム(先に決めた「出口」)
修了時に受講者が「できる」ようになること。すべて観察・測定可能な行動動詞で書かれている——これ自体がM3で教える原則の実践。
| # | アウトカム | 対応モジュール | 修了試験での測定 |
|---|---|---|---|
| O1 | 構成的整合の枠組み(アウトカム→方略→評価)を用いて、自身の担当科目の設計を説明できる | 設計1, 設計2, 評価5 | シナリオ問題 6問 |
| O2 | 測定可能な行動動詞を用いて学修目標を記述・修正できる(Bloom改訂版の水準を適切に選択) | 設計3 | 目標文の良否判定・修正 5問 |
| O3 | 学修目標に応じた教育方略(能動学修・臨床教育技法)を選択し、根拠を述べられる | 設計4, 設計5(能動学修編で深化) | 場面別方略選択 6問 |
| O4 | ミラーのピラミッドと評価のユーティリティ基準を用いて、評価方法の適否を判断できる | 評価1, 評価3 | 評価法マッチング 6問 |
| O5 | 作問上の欠陥を避けたMCQを作成・改善でき、試験ブループリントに位置づけられる | 評価2 | 欠陥問題の同定・修正 4問 |
| O6 | 自科目の成績分布を解釈し、構成的整合の観点から改善点を特定できる | 評価4, 評価5 | 分布読解・改善提案 3問 |
3. モジュールマップ(整合マトリクス)
各行が「アウトカム → 方略 → 評価」の整合を明示する。この表の形式が、M10でお渡しする自科目点検ワークシートの雛形。
設計編 — アウトカムから設計する
| M | タイトル | モジュール・アウトカム | 方略 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 設計1 | なぜ成績はバラつくのか | ばらつきの構造的原因を説明できる/構成的整合の3要素を列挙できる | データによる問題提起 | 想起チェック |
| 設計2 | アウトカム基盤型教育と逆向き設計 | OBEと従来型の違いを説明できる/逆向き設計の3段階を自科目に当てはめられる | 概念図+実在科目の再設計例 | 想起チェック |
| 設計3 | 学修目標の書き方 | 不適切な目標文を同定できる/行動動詞で書き直せる | 悪い例→修正のライブ添削 | 想起チェック(添削形式) |
| 設計4 | 教育方略の科学 | 想起練習・分散学習・能動学修の根拠を説明できる/講義に能動的要素を組み込める | 使い分け表・講義再設計 | 想起チェック |
| 設計5 | 臨床現場で教える | OMP/SNAPPSを再現できる/効果的フィードバックの条件を適用できる | 診療場面の対話例 | 想起チェック(場面判断) |
| 設計6 | コンピテンシーで設計する(追補) | コンピテンス・コンピテンシー・学修目標の階層を説明できる/カリキュラム・マップから自科目の細目とレベルを特定し目標に翻訳できる | 本学カリキュラム・マップの実物ツアー | 想起チェック(現行ブループリント外・Angoff時に組込検討) |
能動学修編 — 学生の頭を動かす(修了試験の範囲外)
| M | タイトル | モジュール・アウトカム | 方略 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 能動1 | 講義を能動化する | 講義内テスト・ピア・インストラクションの手順を説明できる/60分講義に講義内テストを設計できる | コンセプテストの実演・再設計例 | 想起チェック |
| 能動2 | チーム基盤型学習(TBL) | TBLの流れ(事前学習→iRAT→gRAT→応用演習)を説明できる/応用課題の設計原則を述べられる | 1コマの時間割として分解 | 想起チェック |
| 能動3 | 問題基盤型学習(PBL) | PBLの学習サイクルを説明できる/良いシナリオの条件を列挙できる/チューターの役割を適用できる | シナリオ設計と対話例 | 想起チェック |
| 能動4 | 反転授業とシミュレーション | 反転の役割分担と未視聴者対策を説明できる/忠実度・デブリーフィング等の設計要素を説明できる | 導入計画の小さな第一歩 | 想起チェック |
| 能動5 | ClassPulseで教室を動かす(追補) | 4ステップで授業内クイズを運用できる/目的に応じてモードを選択できる/TBLのiRAT/gRAT・ピアレビュー・出席確認と結果出力を実装できる | 実機スクリーンショット(v1.1.0)で手順を追う | 想起チェック(実装演習は実教室で) |
評価編 — アウトカムを測る
| M | タイトル | モジュール・アウトカム | 方略 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 評価1 | 評価の基礎 | 形成的/総括的を使い分けられる/Millerの各層に評価法を対応づけられる | 概念+評価の棚卸しワーク | 想起チェック |
| 評価2 | 良い試験問題の作り方 | 作問上の欠陥を同定・修正できる/ブループリントを説明できる | 欠陥MCQのビフォーアフター | 想起チェック(欠陥同定) |
| 評価3 | パフォーマンス評価 | ルーブリックの構成要素を説明できる/観察評価の誤差と対策を述べられる | ルーブリック実例の解剖 | 想起チェック |
| 評価4 | 成績分布を読む | 分布から設計上の問題を推定できる/基準設定の考え方を説明できる | 実分布の読み解き | 想起チェック(分布読解) |
| 評価5 | 構成的整合 — 自科目を点検する | 整合マトリクスで不整合を特定できる/本講座の設計を実例として説明できる | 点検ワークシート+メタ解説 | 想起チェック+修了試験 |
発展編 — 改善を学識にする(修了試験の対象外・オプション)
| M | タイトル | モジュール・アウトカム | 方略 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 発展1 | 変えたあとを測る — 改善のサイクルとSoTL入門 | 教育改善を測定を含むサイクルとして計画できる/カークパトリックの水準に対応した測定指標を選択できる/教育実践研究の倫理的配慮を説明できる/授業改善を教育業績につなげる道筋を説明できる | 改善サイクルの実例+IR・教育業績への道筋 | 想起チェック(現行ブループリント外・v2で組込検討) |
4. 教育方略の設計根拠(なぜこの形式か)
方略の選択自体がM4の内容の実践になっている。
注意の持続と完了率の知見に基づく長さ。臨床系教員の可処分時間に適合させる。
動画で概念を把持し(二重符号化)、記事で深化・参照する。検索できる文書として残す。
想起練習の直接適用。採点せず・何度でも——形成的評価の実例そのもの。
分散学習の適用。用語集と連動し、忘れた頃に思い出させる。
専門用語の壁で読者を離脱させないための認知負荷の軽減。
ブループリント公開型の総括的評価。透明性それ自体がM6・M7の教材になる。
5. 評価設計
形成的評価:各モジュール末の想起チェック(計28問前後)。採点・記録なし、即時解説、何度でも。
総括的評価:修了試験30問(範囲は設計編・評価編。能動学修編・発展編は形成的な想起チェックのみ — v2のAngoff基準設定時にブループリントへの組み込みを検討)。上のコースアウトカム表の右列がそのままブループリント——「何が出るか」を公開するのは、評価が学習を駆動する(M6)から。合格基準は70%(v1は固定基準。v2でAngoff法による基準設定を実施し、その過程自体をM9の教材にする予定)。再受験は無制限——目的は選抜ではなく学習。
修了証:氏名・修了日・コースアウトカムを記載し印刷可能。開発版の修了証は正式な学内証明ではない。
6. 拡張ロードマップ
- v1(現在):17モジュール(設計6・能動5・評価5・発展1)+用語集101語+想起チェック+修了試験+修了証+全編ナレーション動画+公開(fd.tokai-meded.jp)
- v1.1:監修完了
- v2:修了者レジストリ、Angoff基準設定(能動学修編の問題バンク20問(作成済・監修待ち)のブループリント組み込みを含む)、学修目標の添削演習(faded scaffolding)
- v3:発展編の拡充(カリキュラム開発/教育研究の実践/Ed-Tech・AI)
この設計図に不整合を見つけた方は、ぜひ医学教育学領域までご一報ください。設計を公開して点検を受けることも、本講座が教えたい文化の一部です。