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能動3(能動学修編 第3回)・ PBL

問題基盤型学習(PBL)— 問いから学ぶ設計とチューターの技

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この回の解説記事
📖 問題基盤型学習(PBL)— 問いから学ぶ設計とチューターの技

深掘りの読み物 ・ 約10分

台本を読む(制作用ドラフト・監修待ち)

コールドオープン

[映像] 教員のPC画面。「来期のPBLチューターをお願いします」のメール。添付マニュアルの一文「チューターは教えないでください」が太字でアップになる。

講師: 教務委員会からのメールに、こう書いてあります。「チューターは教えないでください」。教えないなら、私はあの席で何をすればいいのか——。講義なら何年もやってきたのに、教えずに学ばせる授業の作法は誰も教えてくれません。今回は、問題基盤型学習、PBLの設計原理と、チューターという役割の技術の話です。

[テロップ] 能動3 問題基盤型学習(PBL)— 問いから学ぶ設計とチューターの技

セクション1: 哲学 — 問いが先

[映像] 「講義: 知識→問題」と「PBL: 問題→知識」の矢印が反転するアニメーション。外来の診察室のイラストに重なる。

講師: 講義は、知識を先に与えてから問題を解かせます。PBLはこの順序を逆転させ、まず未解決の症例シナリオに出会わせ、解くために必要な知識を学生自身が取りに行かせます。これは臨床の思考順序そのものです。患者さんは診断名を名乗って来ません。目の前の情報から仮説を立て、足りない知識を自覚して調べ、統合する。その一連の流れを、在学中からスモールグループ学習の形で練習させるのがPBLです。

セクション2: 学習サイクル

[映像] 5つのステップが円環図で順に点灯: シナリオ提示→既知の整理と仮説→学修課題の設定→自己学修→持ち寄り統合。

講師: 流れは5ステップです。シナリオの第一報を読む。分かっていることと分からないことを仕分けて仮説を出し合う。そして調べるべき問い、つまり学修課題を自分たちの言葉で立てる。数日の自己学修を挟み、調べた知識をシナリオに戻して仮説を検証する。心臓部は3番目です。講義では教員が目標を示しますが、PBLでは学生が「自分は何を知らないか」を特定します。この問いを立てる力こそ、卒業後に一生使う自己主導学修の中核です。

セクション3: 良いシナリオの条件

[映像] シナリオ原稿の推敲画面。「拡張型心筋症の68歳男性」の診断名部分が削除され、「階段で息が切れる68歳男性」に書き換わる。

講師: PBLの成否の半分はシナリオで決まります。条件は4つ。主訴から始まる現実的な提示であること。情報を小出しにする段階開示であること。第一報の時点では複数の仮説が成り立つこと。そして、ユニットの学修目標と整合していることです。4つ目は構成的整合の応用です。書きたい症例からではなく、到達させたい学修目標から逆算して情報を配置する。逆向き設計の発想は、シナリオ執筆にもそのまま使えます。

セクション4: チューターの技

[映像] セッション風景。口を開きかけたチューターが手元のメモ「質問で返す/10秒待つ」を見て黙る。ストップウォッチが10秒を刻む。

講師: チューターの仕事は知識の伝達ではなく、足場かけです。学生が自力では登れない一段を、答えを与えずに登れるよう支えること。技術は4つあります。誤った仮説には正解を教えず、「その仮説だと、この所見はどう説明できますか」と質問で返す。沈黙が来たら埋めずに10秒待つ。沈黙は思考の時間です。議論が学修目標から大きく外れたときだけ舵を切る。知識の穴はその場で講義せず、学修課題に載せて持ち帰らせる。一貫しているのは、教えたくなる衝動に耐えることです。

セクション5: 機能不全グループと現実解

[映像] 2分割画面: 左は1人が話し続けるグループ、右は全員うつむくグループ。続いてPBLとTBLの比較表。

講師: グループが機能しないときの介入も押さえましょう。1人が支配するなら、役割をローテーションさせ、その学生には他のメンバーの意見を引き出す役を与える。全員が沈黙するなら、問いを小さく具体的に砕く。これも足場かけです。そして現実解の話を。全部をPBLにする必要はなく、講義で知識の幹を渡してPBLで統合させるハイブリッド型が現実的です。チューターを揃えられないならチーム基盤型学習(TBL)という選択肢もあります。知識を確実に揃えたいならTBL、問いを立てる力を鍛えたいならPBL。マンパワーと目標で選んでください。

セクション6: K教授の場合

[映像] K教授がホワイトボードの前で腕を組み、黙って学生の議論を見守る。時計の秒針。ノートの一文「黙ることは、教えることより難しい」。

講師: K教授は心不全シナリオを書き、診断名を消して段階開示に組み替えました。チューター初日、学生の議論が貧血へ傾きます。口を開きかけて、こらえました。「その仮説だと、この頸静脈の所見はどう説明できますか」。続く沈黙は12秒。永遠に感じたころ、学生の一人が「静脈圧が上がっているなら」と話し始めます。60分でK教授が話したのは10分足らず。記録にはこうあります。「講義より疲れた。だが学生が自分の言葉で心不全を説明していた。黙ることは、教えることより難しい」。

まとめと次回予告

[テロップ] 今日の要点: ①問いが先、知識は後 ②シナリオは目標から逆算 ③教えたくなる衝動に耐える

講師: PBLの学習サイクルは、シナリオ、仮説、学修課題、自己学修、統合。シナリオは現実的・段階開示・複数の仮説・目標との整合の4条件を、目標から逆算して満たす。そしてチューターは質問で返し、沈黙を待ち、外れたときだけ舵を切る。次回は反転授業とシミュレーション教育です。教室の外に知識伝達を移し、対面の時間で技能を練習させる設計——そこでK教授は「できた、をどう測るか」という新しい問いに出会います。

[映像] 次回タイトルカード「能動4 反転授業とシミュレーション」

理解チェック

選ぶ前に、いちど自分の答えを予想してみましょう(想起練習)。

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